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『クラウド9』というドイツ映画がある。
60代にして不倫をしてしまう女性を描いた作品だ。
「高齢者のセックス」に正面から向き合い、優しい視点で描いた秀作である。
映画において老人同士のセックスが描かれることはほとんどない。
名女優メリル・ストリープも還暦を過ぎる際、「高齢者のセックスが描かれないなんて不自然、私たちはまだまだ現役だし、そういった仕事がきたら喜んで演じるわ」とコメントしている。
一般的な観客が、老人のセックスを見せられても美しくないから見たくない、と感じるのは自然なことのように思う。
メリル・ストリープがあえて言及したように、高齢になると性欲がうすれ、そもそもセックスをしたいと思わなくなるのではないか、という思い込みがある。
しかし、60歳のセックスは確かに存在する。
60歳からのセックスマニュアルというサイトも見てみたが、60歳になってもまだまだ楽しみたい人がいるのだろう。
個人的な体験ではあるが、思わぬところで「性欲に年齢は関係ない」と感じさせられたことがある。
私が20代前半のころ、取引先でお世話になった方が定年退職することとなった。
新人で右も左もわからない状態の私を助けてくれ、いろいろと教えてくれた、尊敬すべき先輩だった。
その先輩から、定年退職の記念に二人で食事に行かないか、という誘いを受けた。
普段なら、同僚ではない男性と二人だけで食事というと、警戒する。
しかし、彼が妻も子供(当時すでに30代で私よりも年上だった)もいる方だったことから、特に警戒もせずに食事に出かけた。
そして、ホテルへ行かないかと誘われてしまった。
当然断ったが、気持ち悪いとか幻滅とかを感じる前に、ただただ驚いてしまった。
まさか65を過ぎた男性に「若ければだれでもいい」と思えるような性欲が残っているとは、思いもしなかったのである。
実際に体験しなければ、「クラウド9」を見ても、高齢者のセックスということに嘘くささを感じてしまったかもしれない。
しかし、今はもっと高齢者のセックスを描いた映画が増えてもいいのではないのかと思う。